FC2ブログ

スポンサーサイト

--.--.-- (--)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ss かわったこと、かわらないこと

2014.03.02 (Sun)
2月が終わりました。

一応息はしていますオレです。


仕事はまだまだごたついておりますが

プライベートにやっと余裕ができたので出現┬|ω・`)チラッ


妹の里帰りに伴い、一月ほど子供たちの襲撃にあっておりました。

すっかり子供相手のババ抜きテクニックがあがったところであります。


よく言う、孫は来る前は、早く来ないかと待ちわびて、来たら早く帰らないかとうんざりするという心理ww

でも帰っちゃうと寂しいです(´・ω・`)


兄さんと森永君で、どんな感じだったか再現ssを書いてみましたw


なんかこんな風になるんじゃないかな、と未来予想を含めてv






『 かわったこと、かわらないこと 』






 スーパーの袋を抱えてポーチを上がり、玄関扉を開けると宗一が出迎えてくれた。
「おかえり」
 腕に一歳くらいの幼児を抱いて。
「宗一さん!いつの間に子供を産んだんですか!…むいっ」
「お前は毎回毎回、そのネタすんな!」
 赤くなった宗一に両の頬をつままれる。
 森永は違和感のあるほっぺを撫でながら、だって宗一さんが毎回毎回律儀に反応してくれるから、と思う。それに宗一は、子供の前では森永をそうそう殴らない。過去にかなこに子供の前ではダメと諌められた成果はいまだに続いている。母親になったかなこは前以上に強くなった。
 一連の会話はかなこの子供を預かるたびに繰り返されていて、もはや定番と化していた。
 同性と結婚してしまった兄たちの分まで子供を産むのだと、結婚式に息巻いていたかなこは、実際四人の子供を産んだ。その子供たちを、こうしてときたま預かっている。
 今日もあずかる予定は聞いていて、そのための買い出しに家を出ていたのだ。森永が出かけている間にかなこが来たのだろう。
「仁君、ちょっと見ないうちにまた大きくなりましたね。前回は先々月でしたっけ」
 玄関に上がり、スーパーの袋を廊下に置いて宗一の腕に抱かれた幼児を覗き込んだ。ぷっくりしたほっぺを突くと、嬉しそうに笑って小さい手で森永の指を掴んでくる。
「もーなが、ちゃん」
「わっ、しゃべるんだ」
「一歳すぎればこんなもんだろ」
 答える宗一も、仁を見つめながら優しい目をしている。
 そのとき、リビングの方でばたばたと走り回る音が聞こえた。
 乱暴に扉が開けられる。
「てつひろ兄ちゃん帰ってきた!おかえりー!」
「おかえりーっ」
 女児二人が叫んで、走って森永に抱き付いた。
「ナナちゃんにトモちゃん!二人とも二か月ぶりだねー」
 二人をいっぺんに抱き上げてやると、子供たちはきゃーきゃー言って首にしがみついてきた。
「ナナ、もう六才だよ!」
「トモちゃんもー!みっちゅになった!」
 小さい指で三をつくって一生懸命見せてくる。
 森永はうんうんと頷いた。子供らしい甘い声と、高い体温にほおが緩んで溶けそうになる。よその子供だってかわいかったけど、身内の子供はことさら特別に可愛いのだと、ナナが生まれてから知った。
「トモちゃんも重くなったね」
「ナナもでしょ!もうすぐてつひろ兄ちゃんのお嫁さんになれるよ!」
「トモも!」
「は、はは……」
 苦笑いしながら思わず宗一を見やったが、知らんぷりで宗太を連れてリビングに戻ってしまう。ナナには一番懐かれていて、会うたびにお嫁さんになるんだと言われるのは毎回だった。トモはナナの真似をして、最近は自分も森永のお嫁さんになるのだと争うように言う。
森永が某親戚筋の児童と争ったようには、宗一は子供の言うことに取り合ってはくれない。それがちょっぴり寂しい。まあ、アレは特殊な例だが。
「ほら、二人ともリビング行こう」
 言いながら下ろそうとしたが、やだー!とナナに首にしがみつかれた。
 一度は降りかけたトモも、やだー!と姉をまねて慌てて腹にしがみついてくる。
「や、でもちょっと重いし、それに荷物が」
「やだー!抱っこして!」
「だっこー!」
 しかたなくトモを抱えなおして、ナナと二人をまとめて抱っこしつつ、さらに重いスーパーの袋を手に下げた。さすがに辛い。そのまま子供を落とさないよう慎重にリビングまで連れて行った。
 リビングにはもう一人の兄弟、五才になる二番目の子供の宗太が、われ関せずと言った顔で大人しくソファに座って図鑑を眺めている。どうやら宗一の蔵書のようで、園児に意味がわかるのだろうか。
 宗一は仁を抱えたまま、キッチンでお茶の準備をしていた。
「宗太君、こんにちは」
 宗太はちらりと顔を上げて「ん」と頷いたきりすぐに本に目を戻してしまった。
 なんというか、この子だけは毎回マイペースだ。自分の好きなことだけを淡々とやっている。
 リビングまでいってようやく満足したのか、姉妹二人は降りてくれた。
 降りたはいいが、今度は足にしがみついてくる。
「ねー、てつひろ兄ちゃんあそんで!」
「あしょんで!」
「いいよ。着替えたらね」
「ナナもいっしょに行く!」
「トモちゃんも!」
「着替えるだけだから、ここにいて」
「やだー!」
「やー!」
 ズボンの裾を引っ張られて困っていると、宗一が振り返って二人を叱りつけた。
「ナナ、トモ。哲博をあんまり困らせるな」
「はーい」
 しょぼんとなった二人に、森永はなんだか可哀想になって「やっぱり一緒に行こうか?着替えるだけだけど」と言ってやった。
 とたん、二人が顔を輝かせる。
 宗一が甘やかすなと言ったようにこちらを睨んできたので、すみませんと小さく頭を下げて見せた。
 子供に慣れない自分は、来るたびについ甘やかしてしまう。子供たちもそれがわかっているようで、森永に対してはけっこう無茶な要求をつきつけてくるのだ。おかげで懐かれているのはいいけれど、あまりよくないことは一応自覚している。それでも、小さい子供がしょんぼりしているのを見ると、どうにも突き放せないのだ。
 褒めるのは簡単。しかるのは難しい。まったくだよなと思う今日この頃である。
 自室に行ってクローゼットを開けると、ナナとトモが足元で楽しそうに中を覗き込んできた。
「なにがあるのー?」
「なに、あるのー?」
「オレの服だよ。ちょっとだけどいてくれない?」
「ナナがえらんであげようか?」
 言ってキラキラした目で見上げてくる。
 服のセレクトを園児に任せるのは一抹の不安を覚えたが、まあいいかと頷いた。
 自分がうまく誘導してやればいいのだ。
「じゃ、シャツとって……トモちゃん!それだめ!」
 クローゼットを覗き込んでいたトモが、いつの間にやら奥の箱に手をだしていて中身を引っ張り出していた。
「ふうせん」
 コンドームだ。
「あ、いいなー!ナナにもちょうだい!」
 森永は慌ててトモの小さな手から四角い包みを取り上げた。
「やー!ちょうだい!ちょうだい!」
「だめ!あとで別の買ってあげるから!」
「やー!それがいい!ちょうだい!ちょうだい!」
 トモが手を伸ばしながら泣き出した。
「だ、だめなんだって……!」
 小さな手を拒みながら、ひどく焦っていた。
 なんだか大人げないことをしているような罪悪感に囚われる。
「トモちゃん、だめなんだって。別に買ってくれるって」
 ナナがトモに言い聞かせながら頭を撫でた。
 トモはそれでもわんわん泣いている。
「どうした?」
 仁を抱えた宗一が顔をのぞかせた。
「にーちゃん」
 トモが泣きながら宗一にしがみついた。
 子供たちは森永にいくら懐いていても、なんだかんだいってやっぱり最後は宗一の方に泣きつくのだ。
「なんだ?どっか痛くしたのか?」
 トモを抱き留めながら問うような目を向けてくる宗一に、森永はコンドームを隠した手を後ろに回したままバツ悪く首を振った。
「ほら、泣くな。もうじき夕食だからな。こっちで大人しく絵でも描いてろ」
 トモがしゃくりあげながら宗一に連れられて出ていくと、残ったナナが森永を見上げて肩をすくめた。
「トモちゃんこまっちゃうね。わがままだってママも言うの」
「はは……そっか……」
「ふうせんべつなの買ってくれるって言ったのにね」
 ナナは言いながらクローゼットを覗き込んだ。
「てつひろ兄ちゃんいっぱい服もってるね。でもママの方がいっぱい持ってるよ。でもナナの方がかわいいの持ってるかなー」
「そうなんだ。いいね」
 微笑んで返しながら、ナナもずいぶん口調が大人びてきたなと思った。さっきの妹への態度も、いつもああやってなだめたり、面倒をみたりしているのだろう。自分がどうにかしなければという目上としての責任感が透けて見える。
「ナナも着がえよっかなー!ナナね、プリキュアのスーツケース買ってもらったの。可愛いおようふく、いっぱい持って来たんだよ」
「あれ、ナナちゃん今日お泊り?」
「うん!園がお休みだからね、ママがお兄ちゃんがいいって言ってくれたらいいよって。だからナナは今日も明日もあさっても、てつひろ兄ちゃんとねるの!」
「そ、そっかー」
 もちろんダメなんて言えない。
 笑って返しながら、まさか仁やらトモやらまで泊まるのだろうかと不安になる。二人ともまだオムツが取れていない。その交換や食事の世話はどうしよう。泣かれたらどうしよう。怪我されたらどうしよう。宗一が今日に限ってエッチを誘ってきたらどうしよう。…たぶん、それはないけど。
 リビングに戻ってからは、ナナに乞われてカルタ遊びを始めた。
 二人じゃつまらないからと、本を読んでいた宗太も無理矢理参加させられる。
 宗一がまだ涙目のトモを抱いたまま、カルタの文を読み上げた。そうしながら、ちょろちょろしている小さい仁の様子を見ている。
「ありさんぎょうれつありありありー……こら、仁、そっち行くなっ」
「あった!」
 大声で言って飛び出したナナと同時にくらいに、無言で宗太が札を取る。
 森永は一瞬だけ戦線離脱して、キッチンに行こうとした仁を抱っこして連れ帰ってきた。
 帰ってくると、ナナと宗太が札の取り合いをしている。
 どっちが先だったかでもめているようだ。
 そのうちに、宗一の膝で大人しくしていたトモが、手前の札をぐちゃぐちゃにした。頬を膨らませて、拗ねたような顔をしている。
「あー!トモちゃんのばかー!やめて!」
「あーもー、喧嘩するならやめるぞ!終わりだ!」
「ケンカしないよ、やるもん!」
「でもふだは、ぼくのだ」
「ちがうってば!」
 結局カルタ取りは途中でお開きになってしまって、子供たちはてんでにテーブルの周りを走り始めた。さっきまで大人しかった宗太どころか、仁まできゃっきゃ言って、ぜんまい仕掛けのようなたどたどしい足取りで一緒に走っている。小さい仁が大きい子供たちと一緒に走るとつぶされてしまいそうで怖い。
 カルタを片付けながら思ってるうちに仁が転んだ。その仁に、やはりいくらか足取りの怪しい三才のトモが引っかかった。
「あぶな……っ」
 仁にぶつかる前に、森永はとっさにトモを抱き上げた。トモはきょとんとして大人しく森永の腕に収まる。
「ほらもー、終わりだ!走るな、近所迷惑だろうがっ」
 宗一の一言でナナも宗太もぴたりと足を止めた。懲りずに小さい仁だけがきゃあきゃあ言いながら走り回っていて、「ほら、終わりだ」と宗一が捕まえて抱き上げる。
 仁は宗一の腕の中で嫌がってもがいていたが、宗一が高い高いしてあやしてやるとすぐにご機嫌になって笑った。
「にーた」
 幼児らしい可愛らしい声で言って宗一の首に抱き付いている。
「んー、よしよし。ナナ、宗太、ちゃんと片付けろ」
「「はーい」」
 年長二人は大人しく返事して、散らかしたままのカルタや本を片付け始めた。
「宗一さん。さっきナナちゃんにしばらくお泊りだって聞いたんですけど……」
 トモを抱いたまま森永は恐る恐る尋ねた。トモはすっかり森永の腕が気に入ったのか、しっかりと両手で首に抱き付いていて、しばらく離れそうにない。
「夕方になったらかなこが迎えにくるはずだから」
「そ、そうですか」
 思わずほっと息を付く。
 子供は可愛いが、半日くらいならともかく、あまり長い時間だと余っているというかなんというか……。
 全力で相手をしつつ神経も使うので、下手な力仕事をするよりもくたびれてしまう。
「……ナナとトモと宗太は泊まるって言ってるけどな」
「えっ。宗太君もですか」
「ま、たぶん夜になれば、いつもみたいに母恋しくなって帰るだろ」
「そ、そうですよね。みんなまだ小さいし」
 過去にも何度か子供たちの襲来を受けているが、昼間は勢いよく泊まるのだと言っても、かなこが迎えにくれば、あっさりと子供たちはみな帰るのだった。
 ただ、ナナはもう六才だ。そろそろ一人でお泊りも可能かもしれない。さらに彼女は、子供用のスーツケースまで持ち込んでいて、用意周到な様子だ。
 子供は可愛い。可愛いけど……
 ……ちょっと不安だ。
 



 子供たちは一瞬たりともじっとしていなかった。
 次から次へと新しいことをはじめ、食事もトイレもオムツ替えも、リビングにいても、一瞬たりとて目が離せない。
「この部屋だけ!この部屋から出ちゃだめだよ!ナナちゃん、ベランダは危ないから開けちゃダメ!あああ、仁君、キッチンはダメだって!」
自宅とは違う場所に子供たちは興奮しているようで、追いかけまわす森永は保育士にでもなったような気がした。次から次へと子供に付き合って別のことを始めるせいか、一日がひどく長く感じた。
 ようやくかなこが迎えに来たとき、森永はリビングでトモの馬と化していた。
「ごめんね、森永さん。さ、トモちゃん帰るよ」
 よそ行きの化粧をしたかなこが謝って、森永の上のトモに手を差し出す。
 トモは聞こえないふりをした。
 かなこが「こら」と言ってトモを森永の上から引き離した。
「やー!」
「ナナも帰る用意しなさい」
「てつひろ兄ちゃんが泊まっていいって言ったよ!」
えっ。
 こちらに顔を上げたかなこに、森永は乾いた笑いを返す。
 かなこはナナに首を振った。
「ダメよ、あんたどうせ一人じゃいられないでしょ」
「トモちゃんも泊まるって」
「トモちゃんはもっとダメ。おねしょする子はよそに泊まれません」
「……オレ、泊まってもいいけど」
 それまで大人しく帰る用意をしていた宗太がぼそりと言った。
「おねしょなんかしないし。にいちゃんのほん、もっと見たい」
 いつも大人しく従う宗太までそんなことをいいだした。かなこは困惑した顔で宗太を見つめる。
「いいよ、あずかるから」
「兄さん」
「ただし、わがまま言ったりうるさくしたら、速攻帰すからな」
 宗一の言葉に、子供たち三人が一斉に声を上げて頷く。宗一の腕の中の仁は、よくわからないながらにこにこしていた。この子は人懐っこくて、母の腕でも叔父の腕でも、義理の叔父の腕でも抱いてくれればどうだっていいようだ。
「じゃ、リビングで森永と遊んでろ」
「うん!」
 ええー!と思ったが、息をついて子供たちを迎えた。
 まぁ、たまのことだし。しばらくは子供たちにサービスしよう。
「よし、てつひろ兄ちゃんと遊ぼう」
「うん、おままごとしよう!ナナがおくさんね。てつひろ兄ちゃんはだんなさん」
「ぼくは?」
「宗太はおじいちゃんで、トモちゃんはあかちゃん」
「トモちゃん、あかちゃんじゃないよ!あかちゃん、ジンちゃんだよ!」
「オムツする子はあかちゃんですー」
「ぼくだってじいちゃんじゃない」
「ほらほら、喧嘩しないの」
 森永は苦笑いしながら、賑やかな子供たちに引っ張られるままのリビングに向かう。ふと後ろを振り返ると、宗一がかなことなにか話していた。
 
 
 
 
 夕食の準備で騒動があり、夕食の時にもひと騒動あり、ベッドメイクでさらに騒動があり、もちろんそれらの前後でも子供たちは大人しくなんかしていない。
 どういうわけか全員が森永と風呂に入ると言い出したので(たぶん年長のナナが森永とがいいと言ったせいだ)、子供たち全員を順番に風呂に入れ、森永は湯船に出たり入ったりですっかり湯だってしまった。
「ううー、だるい……」
 ソファに背中を預けてぐったりしていると、仁を抱えた宗一が苦笑いしながら冷たいビールを出してくれた。
「おつかれさん。全員入らせて大変だったろう」
「宗一さんが手伝ってくれたから、なんとかなりました」
「かなこは毎日やってるんだから、たいしたもんだよな」
「ほんと、頭が下がりますよ」
 子供たちは、今は大人しくビデオでアニメを見ている。
 その様子を微笑んで眺めながら、ビールを一息に煽った。
 冷たい苦みが喉を通るのが心地いい。
「どうせなら、宗一さんもお風呂にいれてあげたのに」
 口を拭いながら、からかう口調でそんな風に言うと、宗一は頬を赤らめて睨んできた。ぷいと顔を背けた拍子に、長い髪が翻る。
「子供がいるから今は殴らん」
(後で殴るんですね)
 森永は床に後ろ手をついて笑った。
 すぐ隣には宗太がいて、大人しくアニメを見ている。
 ふと、そういえば今日は一度も宗太を抱っこしてやっていないなと思いついた。ナナもトモも仁も、みんな抱っこしたり高い高いしたりとしてやったが、宗太はあまり主張してこないので接触が少ない。それは他の子供と比べて不公平な気がした。
「宗太君、抱っこする?」
 宗太はぱっとこちらを向いて、それからはにかんだように頷いて膝の上に乗ってきた。
(やっぱりかまってほしかったのかな)
 宗一がキッチンの方で仁をあやしながら、寝かしつけようとしている。小さく子守歌を口ずさんでいるようだ。
 かすかに聞こえてくるそのメロディに耳を傾けながら、腕の中に子供の体温を感じていると、とても満たされた気分になる。
 ふと、ナナが振り返った。
 近づいてきて、森永の腕を引く。
「ナナも抱っこして」
「えっと、あとでね?いま宗太君抱っこしてるから」
「うん。じゅんばんね」
 ナナは大人しく森永の隣に座った。
 ほんの一呼吸くらいの後、宗太が立ち上がってナナに膝を譲った。
「宗太君?もういいの?」
 ん、と頷いてはにかんだように笑うので、なんだか不憫に思える。
 ナナはすぐに森永の膝に乗ってきた。直後に今度はトモがこちらに気づいたようで、隣にやってきて押しのけるようにナナのパジャマを引っ張った。
「痛い、トモちゃんやめて」
 嫌がるナナを強引に押しのけて、森永の膝に座ろうとする。ナナは抵抗して森永の膝から動かない。
 森永は困惑した。順番を守ったナナと、まだルールなどは理解できない幼いトモ。こういう場合、どちらを優先したらいいんだろう。
 いっそ二人ともと、両方を抱えるが、膝の上でトモがナナを無言で押しのけようとする。ここは自分の場所だと言いたいのだろう。
 結局ナナが無理矢理膝から落とされて、そのまま諦めた。
 森永はトモを諭したらいいのか、しかし言っても理解されないだろうことは想像できて、しかも泣かれるだろう予想もつくから、何も言えずひたすらおろおろするばかりだった。
 はたから見ていると大分トモがわがままで、上の子たちにとっては理不尽に思えたが、宗太もナナも、笑いながらテレビを見ていて、すでにこだわっていないようだ。
(子供って、あんがい大人かもしれない)
 観察しながらしきりに感心している森永を、宗一が忍び笑いながら眺めている。彼の腕の中の仁は、ようやく眠ったようだ。
 宗一は客用の寝室に仁をいれたあと、戻ってきて子供たち全員に寝るように告げた。
「トモちゃん、てつひろにーちゃんとねんねする」
 意外にもナナより先にそう言い出したのはトモだった。
 にこにこしながら森永にしがみついてくる。今日一日で、トモには前以上に懐かれたようだ。
「えっと、ナナちゃんもオレと寝るんだよね?」
 妙に神妙な顔をしていたナナは、あいまいな笑顔で頷いた。
「宗太はこっち来い。俺と寝るぞ」
「うん」
「俺達は客用の方で寝るから」
「わかりました。おやすみなさい」
 この家に越してから、別々の寝室で眠るのは久しぶりだ。
 宗一がおやすみと告げて、宗太をつれて客用の部屋に入っていく。宗太は手を振って大人しく宗一と手をつないで客用寝室に入って行った。
 いつものダブルベッドで、宗一のかわりに両側に子供たちが収まる。トモがすぐに甘えるように抱き付いてきて、森永は抱きしめ返しながら子供らしい高い体温とミルクのような甘い香りを感じながら目をつぶった。
「……ひっ……」
 暗くしていくらもしないうちに、傍らからしゃくりあげる声が聞こえた。
 見ると、ナナが顔を歪めて泣いている。
「どうしたの?ナナちゃん」
「……ママ……」
 どうやら母親が恋しくなってしまったようだ。そういえば、先ほども少し様子がおかしかったように思う。
「おねえちゃんないちゃったの?」
 不安そうな幼い声が抱きしめた腕の中から聞こえた。
 子供は連鎖反応を起こす。大丈夫だからとトモをなだめていると、いよいよナナが声をあげて母親を呼びながら泣き出した。
 起き上がって二人共を抱きしめながら背中を撫でてやる。しかしナナの涙は止まらないようだ。
「おねえちゃん、なかないで」
 トモが小さな手で姉の頭を撫でている。
 その姿にじんとしながら、森永も泣きたくなってきた。
「ナナちゃん、ほらトモちゃんもこう言ってるよ?寝たらすぐ朝になるからね、そしたらママのところに帰ろう」
「……ひっく……ママぁ……」
 なだめるほど泣き声は激しくなっていって、おろおろしているところにドアが開いて明かりがさした。
 宗太をつれた宗一が顔をのぞかせる。
「どうした」
「そ、宗一さん……!」
 助けてー。
 幼子を抱きかかえて半泣きの自分はよほど情けない顔をしていたのだろう、宗一は口を押えて小さく吹き出した。
 それから近づいてきて、ナナを抱き取る。
 ナナは泣きながら宗一に抱き付いた。
「ママが恋しくなったのか」
 頷く背中を優しく撫でながら、宗一は微笑んでいた。
「もうすぐ来るから。安心しろ」
「えっ!?かなこちゃん来るんですか?」
「ああ、夕方来た時に言っておいたんだ。もうそろそろ着くころだ」
 話しているうちにインターホンが鳴った。
 玄関を開けるとかなこが旦那と共に立っていて、ナナは大声で泣きながら母親に抱き付いた。
 
 
 
 結局今回も一泊も出来ずに、子供たちは帰って行った。
 やれやれと肩をもみながら森永はソファに落ち着いた。
 一日慣れないことをしたものだから体中の節々が痛い。子供は軽いとはいえ、ずっとだいていると地味に重くなってきて辛い。
「一日大変だったな。ほとんどみんなお前が面倒みてくれたし。助かったよ」
 向かいに座った宗一が、コーヒーを勧めてきながら言う。
 ありがたくいただきながら、ほうっと安堵の吐息がこぼれた。
「でも俺も、楽しかったですよ。カルタだのお絵かきだのって、あの子たちが来たときくらいしかやりませんからね。まあ、これが毎日だと辛いかもですけど。それにしても意外でしたね。ナナちゃんが一番泊まる気満々だったのに」
「トモあたりが母親なしじゃ無理だろうなと思ってたんだが、まさかのナナの方だったな」
「宗太くん、大人しくていい子ですね。ナナちゃんはお姉ちゃんらしいし、トモちゃんも、ちょっとわがままだと思ったのに、ナナちゃんを一生懸命慰めようとしたりで……みんないい子ですね」
「トモも、上にはわがまま言うけど、下の子にはある程度譲るからな。今のところ仁のやつが最強だな」
「たしかに、誰もかないませんね」
 笑い返しながら、がらんとしてしまったリビングを眺める。
 あれだけ賑やかだった後だと、静まり返った家が妙に寂しい気がした。
「子供がいたらあんなふうなんだなぁ」
 虚空を見つめながらぼんやり呟くと、宗一が目を吊り上げて睨んできた。
「……今更な議論なんかしねーぞ」
 森永は苦笑いした。
 昔、散々そのあたりのことについては悩んで喧嘩もたくさんした。宗一を普通の幸せから遠ざけたという罪悪感は、薄まりこそすれ一生消えないだろうが。
 宗一が深く息を吐く。
「なんなら養子でもとるか」
「んー……それよりも、先に子作りしてみません?」
「バ……っ」
 宗一が真っ赤になって、その顔に思わず笑うと、クッションを投げつけられた。
 どうしてこの人は、何年たっても慣れないのだろう。
 森永はクッションを受け止めながら、首を傾げて微笑んだ。
 そうして自分は、何十年たってもこの人に飽きないのだ。
 
スポンサーサイト
トラックバックURL
http://kuronekodareka.blog.fc2.com/tb.php/417-bbee9d56
トラックバック
コメント
管理者にだけ表示を許可する
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。